外見とは裏腹、見た目通り、人が好き -安藤ゆき「町田くんの世界」- [漫画]
あまり間を置かずに更新。
なんとかしてこのくらいの間隔でアップの習慣をつけたいです。もっと頻度上げないとダメな感じもしますが、まあ、無理しても続きませんし。
で、今回は、表題のある通りの作品になりますが、少女漫画に分類される作品について少し書きたいと思います。
安藤ゆきの「町田くんの世界」(集英社)になります。
どんな作品かというと、こんな感じ。
主人公の町田一くんは、高校生の16歳。物静かでメガネの外見で真面目なのですが、要領が悪く、不器用。
学校の成績は、追試の対象になったりするくらい、よろしくない(メガネなのに)。
で、外見に似合わず運動神経が優れているのかというと、こちらはみたまんま。こちらもあまりよろしくない。
本人もそれを自覚していて、自分に得意なことなんてあるのかと思ったりします。
でも、周囲から彼は恰好良いと言われたりしますし、愛されています。
それは何故かというに…、という話。
描線は、マーガレット系というのか(私の偏見かもしれませんが、マーガレットで描いている方はそこそこの割合で描線がやたらと細い印象があります)、丸ペンで描いた極細の描線。 背景の家や家具などは、写真をもとに手描きしているんでしょうか、リアルな感じですが、硬質な感じではなく、作風にマッチしているように思います。
作品内容の感想についても。
こんなにすれていない、ナチュラルに人が好きという人物がいる?と思わないでもないのですが、
そこはそれ。ものがたりということで、となってしまうのですが、大事件があっての非現実感ではないので、あまりにリアルから乖離している絵空事、と感じて白けてしまうようなことはないように思います。
適切な浮遊感で、幸せを感じられる作品になっているように思います。
キャラクターが何でもできるスーパーマンでないところも影響しているのかもしれませんね。
むしろ、真面目だが、要領が悪く、勉強も運動も残念でと、何らかの評価をするなら、「できの悪い人」という設定ですから。
ただ、本当に出来が悪いのかというとそうでもないような気がします。
というのも、人の好さ、という評価は難しいのかもしれませんが、IQであるとか、運動能力といった目に見えやすい、いわゆる認知能力ではない、非認知能力が高いキャラクターなのかなぁ、などと思うからです。
そうであるとすると、主人公はできの悪い人などではなく、見えにくいところの能力が非常に高いのですから、主人公の周囲の評価は決して悪くない、社会的な成功に結びつくのも自然なこと、なのかもしれません。
また、主人公の町田くんの語りは、道化が真理を語るのにも似たような印象があります。
社会をまっすぐに見られない人に対して、愚直なまでにまっすぐに見たことをそのまま伝える。ただ、道化がよくやる婉曲的な人をけむに巻くような言い回しは全くしませんけれども。 道化というより、愚者、の方が適切でしょうか。
…まあ、そんなことを考えずとも、主人公の町田くんの目を通した世界は素晴らしく見えますので、興味を持たれた方は、その感覚を共有していただければと思います。
という事で今回は、「ナチュラルボーン」とか「町田イズム」とか、自分には一切ないなぁ、と思いながら、 町田くんの世界はきれいだと分かるから、それでいいかなと思う、という話。
コメント 0