場違いな地「ギロッポン」に立つ [日々]
休みを利用して、あまり行かないところに行きました。
その場所は、六本木。
いや、別に、なんとかヒルズやら、なんとかミッドタウンやらを見物し、「私とは違う人種の人が来るところなんだなぁ…」と、自らの立ち位置を実感したくて行った訳ではありませんで。
用があったのは、こちら。
国立新美術館です。
こちらの企画展で、「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」がやっておりまして。
行こうとは思っていたのですが、「まあ、開催期間も長いし、時間に余裕があるときにでも行こう」と、悠長に構えておりましたところ、そろそろ終了することになっておりましたので、台風の影響で大雨になるかも?などという日に、行くことにあいなりました。
…日頃のスケジューリングの甘さが出ていますね。
まあ、実際は、雨にも降られず(ただ、移動中、夕立のような雨には降られたものの、丁度屋根のあるところを移動中でしたので影響はなし)、風が非常に強く、駅に行くまでの自転車を漕ぐのに難儀したくらいで済みました。
…だいぶ進路から外れた関東ですらこれですから、台風の近い地域は、それは大変だろうと思います。
さて、今回の「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」、テーマというのか、何をメインに扱った展示かと申しますと、「印象派・ポスト印象派」です。
ちなみに、行く前の私の印象派に対するイメージ。
・(多分、ルノワールのイメージから)なんだかぼんやりしていて、「もっと、しゃきっとしろ!」と言いたくなる。
・写実主義と比較すると、見るべきポイントがはっきりしていないような気がする。
と、あまり良いイメージを持っておりませんでした(はっきりいうと、悪いイメージを持ってました)。
加えて、結構、印象派の絵って、人様の人気が高いような気がして、そういった多くの人が良いというものに乗っかるのもなぁ…という、へそ曲がりな私の性格も影響していたりします。
とまあ、あまり良いイメージのない印象派の絵画ですが、しっかり見たことはなかったなぁ、ということで、今回、これだけの質の高い作品がそろった展示もないようで、
「これを見ずに、印象派は語れない。」という煽り文句を信じ、観に行った次第です。
あ、もう一つ重要な動機がありました。
デューラー、レンブラントと、モノクロの版画や素描メインの展示を観に行くのが続いたので、
「カラフルな展示が見たいんじゃあ!」
という切なる思いが、多大にありました。
それで、見た感想。
観に行って良かったです。大変満足しました。眼福眼福。
実物と印刷物等では、印刷物等の再現が十分にいかず、実物の良さが伝えきれないことがよく分かりました。いや、今回の展示に限らず、図録の印刷では、そのものの良さを十分に再現できないものなんだなぁといつも感じるのですが、今回はとくに顕著でした。
いや、比較的よく再現できている作品も多少はあるのですが、その多くは、随分と見たときの印象と異なりました。
もちろん、今回の図録の出来が悪いなどという意味ではなく、印象派の方の手法や色遣いなどから、印刷の影響を受け易いのではないかと。
美術品は「実物を見ろ」とはよく言われることのように思いますが、本当にその通りでしたね。
個人的に、特に良かったなぁというところを挙げておきますと、
マネ「キング・チャールズ・スパニエル犬」
「鉄道」のワンコもいいですが、こちらもかわええです。図録のそれより、もっと明暗がはっきりしていたような印象があります。
マネ「プラム酒」
近くで見るとかなり荒いタッチなんですが、引いて見ると綺麗な明暗表現になっていて、素敵でした。
カミーユ・ピサロ「麦わら帽子をかぶる農家の少女」
厚塗りを細かく重ねたタッチが印象に残りました
モネ「日傘の女性、モネ夫人と息子」
超有名な作品。実物は、明暗が結構はっきりしていて、単純に綺麗だなぁ、と。
モネ「ヴェトゥイユの画家の庭」
近くで見ると、明るい色の点の集合のようなものでぼんやりとしている作品なんですが、引いて見ると、描きたかったものがわかる、そんな感じで、画家の精緻な計算のもとに描かれているんだなぁ、と。いや、他の作品でもそういったものはあるんですが、この作品は特に大きかったので、その分印象も強かったです。
ルノワール「モネ夫人とその息子」「踊り子」
図録で一番再現が難しいのかなぁ、と思われたのがルノワールでした。コントラストが薄くなってしまうのか、実物はもっとはっきりとしていて、ものっそい綺麗なのになぁ…
メアリー・カサット「浜辺で遊ぶ子どもたち」「麦わら帽子の子ども」
子どもの表情がかわええ作品でした。あまり似ていないはずなんですが、これらの作品を見ていたら、ノーマン・ロックウェルが思い出されました。
セザンヌ「赤いチョッキの少年」「水辺にて」「川辺」
「赤い…」は、説明できないのですが、非常に目を引いて、印象に残りました。
後者の2作品は、図録の再現が難しいのかなぁ2号。何か水墨画みたいで面白かったのですが…。
といったところでしょうか。画像は…、上げたらまずそうなので上げませんが、画家名とタイトルを上げておりますので、それで検索すれば、どんな作品かはお分かりいただけるかと(検索するまでもなく、めっさ有名な作品もありますけども)。
例によって、ものすごくゆっくり回りましたが、今回は、3時間ほどで回りきりました。
私は、11時頃から見始めたのですが、14時頃からはえらい混みようでしたので、一度見た作品を再度見ようと思ったのですが、そこそこにして切り上げました。
あの時間から見た人は、「近くで筆致を見て、その後で引いて絵画全体を見て…」といったことなど、できそうもないくらい会場が込み合ってしまっていて、果たして十分に楽しめたのだろうかと、他人事ながらつくづく思いましたが…、どうだったんでしょう?
おまけ:
今回買った図録 メアリー・カサットの「青いひじ掛け椅子の少女」が表紙です
ということで今回は、食わず嫌いを克服!あるいは、今度六本木に行くのは何年後でしょう、という話。
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