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好きな馬鹿、嫌いな馬鹿 ―梅吉「一杯では終われません」― [漫画]

私は基本的に馬鹿が嫌いです。

ただ、しばしば書かせていただいておりますが、私のいう「馬鹿」というのは、学歴的なものとは異なります。
学校のテストや成績が良くても、良い学校に行っても、その人の話を聞いたりするに、頭が悪いなぁと感じさせる人はいまして、そんな奴ァ、いい学校出ていようが何をしようが、私にとって馬鹿以外の何者でもなく、
逆に、学校の勉強がそれほどいいという訳でなくても、話などをするに、すっとこちらの意を汲める、そんな明晰な頭脳の持ち主もいると思うこともままあります。
…私自身が、「学歴はまああるんだけど…」な、自分の嫌いな馬鹿に属しているような気もしますが…、それはそれとしまして。

一方で、矛盾するようですが、私は馬鹿が好きだったりします。
どうでもいいことや妙なところにこだわって、無駄は無駄なのですが、それを楽しむ風だったりしますと、それを好ましく思えたりしませんでしょうか。
私なんぞは、こういった人やものごとを傍目から見るに「馬鹿だなぁ。でも、面白い!」と感じます。なものですから、こういう馬鹿は好き。

私のボキャブラリーが貧困ということもあって、言葉それ自体は全く同じなのですが、上記のように、意味が異なります。いい意味の馬鹿と、悪い意味の馬鹿。
大きな違いは…、なんでしょう。多分に、私の主観によるところが大きいのですが、見ていて苛立ちを感じる類の頭の悪さは前者、ほほえましいというのか、思わず笑ってしまえるものは後者、でしょうか。

正確な言い回しまでは覚えていないのですが、「人生は死ぬまでの暇つぶし」といった旨の言葉があったように思います。
それなら、おおいに無駄を楽しもうじゃないか、というスタンスはアリだと思いますし、また、学力的なものがいまひとつであっても、周囲まで楽しめるなら、無駄などではなく、少なからず有意義ではないか、と思ったりします。
また、私などはこれが全然で、上手い人を見習いたいのですが、会話のテンポがいいというのか、「間」を上手く取れる方というのは、話をしていて頭の良さを感じますね。…書いていて、何だか収拾がつかなくなってきました。


話は変わりますが、結構前に、唐沢なをき「怪奇版画男」という漫画を製作したことがありました。
「描く」ではなく、「製作」
どういうことかというと、描くのではなく、1頁1頁、版木を彫って漫画を作っていたんですね。

こういうの、私にとっては、典型的な前述にいう後者に属する馬鹿です。いい意味での馬鹿。

ということで、今回採り上げるのは、梅吉(女性、だそうです)の「一杯では終われません」(講談社)です。

これも後者の馬鹿です。
どの辺がそうかと申しますと、これです。

SSCN0652.JPG

この画像、カバー表紙ですが、…これでは、わかりにくいでしょうか? もしかすると、単にのコントラストの強い画風?」くらいにしか思えないかもしれません(私自身も、最初見かけたときは「随分とコントラストが強いなぁ」くらいに思っていました)。
ただ、それくらいで、馬鹿(←いい意味)などたぁ、いうはずがありません。

どういうことか? …下の画像を御覧になってみて下さい。これでいかがでしょうか? お分かりになりましたでしょうか?

SSCN0653.JPG
(カバーの裏表紙になります)

この作品、「切り絵」で作られた作品なんです。
で、最初の絵をよく見ると、絵に描かれている作者の持っているのは、ペンではなく、カッターなんですね。

SSCN0654.JPG

作品の内容それ自体は、酒好きな作者が酒蔵行ったり、試飲会に参加したりという、酒に関連していろいろな所を探訪するエッセイ漫画です。エントリのタイトルに敢えて関連付けると「酒飲みってぇのは、良くも悪くも馬鹿だなぁ…」といえる内容でしょうか。
読んだ感想としては「まあまあ、面白い」といった印象で、抜きん出て面白いというものではなかったです。
…あ。悪い印象ということではないんですよ? ただ、作品内容より、その手法の面白さが際立っているので、どうしても、…ねぇ?

加えて申しますと、前述しました唐沢…の「版画男」は、作品内容とその製作手法がリンクして、作品のネタとなっていましたので、それと比較すると、見劣りしてしまうように思います。

そのような訳で、「悪い出来」というのではなく「製作手法と比較して、そこまで印象に残るすばらしい印象を受ける作品内容ではない」くらいに思って戴ければ、と思います。

…なんだか、こういう、いい意味でくだらないことをしている人って、個人的に非常に応援したくなります。こちらを御覧の皆様も、ちょっとでも応援してくださると嬉しいです。

ということで今回は、悪い意味での馬鹿がいい意味での馬鹿について書く、という話。


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才谷屋

>「人生は死ぬまでの暇つぶし」
やばいですっ!!

感銘を受けましたっ!(笑)

by 才谷屋 (2009-01-29 19:24) 

粋狂

>才谷屋さん
死ぬまでの暇つぶしという言葉、人によって、肯定的にも否定的にも受け取れる、結構曖昧なものですね。
とすると、評価を含んだ表現ではなく、単に「こういうものだ」という状態を示した表現なのかもしれません。

例えば、その後に言葉を続けないと、悲観的な「諦観」とも感じられますし、逆に言葉を続けて「どうせ必ず死を迎えるんだったら、それまでの暇を楽しまないと損だ! 楽しんだ者勝ち!」とすれば、かなり楽観的ともとれます。

せっかくなので、肯定的にとらえたいものです。
by 粋狂 (2009-01-30 20:29) 

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