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他人には理解できないルールの住人-安倍吉俊「リューシカ リューシカ」- [漫画]

今更言うまでもないことですが、私は自慢にならないくらい貧乏です。
…なもので、体の変調にどちらかというと過敏に反応する割に、温度変化に無頓着、というよりも、頓着する経済的余裕がない、という状態で、した。
どんな状態だったかと申しますと、ここ2年くらい、エアコンはコンセントにプラグを差し込んですらいない状態で、室温は高いところで、35度超のところがあって、そこで寝ていた、というと分かり易いでしょうか。…体力のない老人や幼児でしたら、ヤバいことになるレベルですね。

一度、こんなことがありました。
ある暑い日に、いつものように寝ておりまして、寝返りをうちましたところ、「冷てっ!」と目が覚めました。
何が冷たかったのかと申しますと、寝汗マットレスが自分の体の下でびっしょりでした。
我ながら、なかなかにすごい状態でした…。

ですが、今年は少し事情が変わりまして。
というのも、汗で、背中辺りの皮膚がふやけて(長風呂したときの皮膚をイメージして戴ければ宜しいかと)、かなりの範囲でうっすらひび割れて、肌がカサカサになってしまいまして…。
さすがにまずいと。なもので今年は、私にしては生意気にも贅沢にも、エアコンを使用しております。

去年までの違いは、…勤務先の環境が影響しているんでしょうね、きっと。
現在の仕事場は、結構快適なもので。加えて、私自身の格好も、従前のスーツ着用という暑苦しい格好から、かなりラフな私服になりましたので、体が楽な方に順応してしまい、それがゆえにエアコンを使用しないと対応できなくなった、ということかもしれません。


とまあ、エアコンを使用するか否かといった、私自身のけち臭い身の上(さすがに、自分で書いていても少し凹みます)はさておきまして、私が「貧乏」というキーワードで思い出す漫画といえば、安倍吉俊「NieA_7(ニアアンダーセブン、が本のタイトルとしては正確かもしれません)ですね。
どんな話かと申しますと、舞台はほぼ現代。いつの間にか地球に住むようになった宇宙人が日常見かけられるようになった世界。
貧乏浪人生「まゆ子」と、まゆ子の部屋に居候する地球在住の底辺宇宙人「ニア」のドツキ漫才な日常を描いた漫画。 

で、「NieA_7」タイトルの「リューシカ リューシカ」と何の関わりがあるのかと言いますと、作者が「NieA_7」と同じ安倍…なんです。
その「リューシカ…」、どんな話かと申しますと、舞台は現代日本の一家庭。その家族の末の娘「リューシカ」と、その姉や兄との日常を描いた作品になります。

掲載は、雑誌ではなく、Web。それを反映して、単行本はオールカラーとなっています。
…やはり、今後、こういう系統の作品も少しずつ増加していくんでしょうかね。悪いことではないと思うんですが、いかんせん、カラーの多い単行本は単価が高くなるのが…、ねぇ? などと貧乏な私なんぞは思ってしまいます。

…また、貧乏話に戻ってしまいます前に内容について話を移します。
冒頭の、その1の「あかくてまるくてにらむもの」で、ただただ大笑いしました。一発ではまりました。
主人公リューシカと姉のあーねーちゃんの掛け合いは、ニアとまゆ子のボケとツッコミに似ていて、いいテンポです。

また、そのテンションが、「NieA_7」のそれに近くて、久々に安倍…のこちら系の作品を読んだ気がします。こういう系統の作品の方が面白いので、こちらをメインに描いて欲しいなぁ、とつくづく思います。
暗いのも…、まあ、いいんですけど。バランスとして、です。


しかし、単行本を読んでいくにつれ、笑えるということだけでなく、懐かしさとともに、年齢を経るにしたがって失われたものが描かれていることに気付きました。

例えば、リューシカは
姉の有季子(ゆきこ)のことを、「あー」という言葉がどこにも入っていないのに、「あーねーちゃん」、
兄の賢を「アニー」、
今のところ絵的には現れていませんがママのことを「まー」と呼びます。
それを姉や兄に指摘・訂正されても、直しません。それは何故か。

思うに、作中説明されてはいませんけれども、言葉の源を考えると、「姉」、「兄」、そしてママではなく「マザー」という言葉を、リューシカがどこかで知り、その上で、自分なりに変換(どういうロジックかは不明ですけれども)して、一般名詞ではなく固有名詞混じりのものとして使っているのではないか、と私などは思います。
自分なりのロジックに基づくので、リューシカにとってそれは正しい、だから兄や姉に指摘されても、「あーねーちゃんも、アニーも分かっていないなぁ」と、直さないのではないか、と。

このように、子供が他人には分からない、独自のロジックというのか、ルールというのか、を作っているのが読み取れるかと思います。

また別に、例えば、ex5の「めいきゅういりじけん」で、ラーメンのエピソードが展開していますが、これなどは個人的に親近感を覚えました。
というのも、私は、幼少の頃、ラーメンを食べるのが苦手といいますか、ハンパなしにものすごく遅くて、両親からいつも怒られていました(…なもので、味云々ではなく、この「親に怒られる」が理由で、ラーメンがものすごく嫌いでした)。
何故食べるのが遅かったのかといいますと、ラーメンのスープに浮かんでいる油が気になっていたからです。転々と浮かんでいる油を、ひとつにまとめよう、まとめなくてはならないと、いつも思っていました。

さらに、何故ひとつにまとめようと思っていたのかは…、分かりません。リューシカのように、油が生きているように思っていたところはあったように思います。「バラバラになっていて可哀想だから、ひとつにしてあげなくては!」ということだったかもしれません。
それに加えて、なにがしかの理由があったのかもしれませんが、何故そんなに油をまとめるのに執心していたのか、今となっては分かりません。

同じものを見ているのに違って見える、子供の目というフィルターを通して見える世界。
「リューシカ リューシカ」には、いつの間にか消えてしまう、その世界が描かれているように思います。

さらに、何故、いつの間にか消えてしまうのかということを考えるに、こんな理屈がひとつにはあるのかなぁ、と。
安倍自身は、冗談交じりの対談形式のあとがきに、この作品を

「リューシカという空想癖のある女の子のお話で、空想がどんどん変な方向に転がってゆく事に、何かおかしさや、不安や、逆に、空想を頼りに不安とたたかう子供の力、のようなものを描こう(後略)」
「子供の目から見た時、世界は知らない事、分からない事だらけで大人には分かってもらえない怖い事や不安な事がたくさんあった(中略)かみ合わない部分を埋めて世界を面白いものに変えてくれるのが空想なんじゃないか(後略)」

と書いています。

そこから考えるに、経験・知識も少なく見てきた世界も狭い子供が、よく分からない事態に出くわした際、自分を納得させるために、自分の中にある経験や知識、自分の知る世界の中にあるものでなんとかしようとする訳ですが、それでも足りないときに、空想で補うことになります。そして、経験や知識が増え、所謂常識が身に付いてくるにつれて、不足を空想で補う必要がなくなっていきます。それで、空想で補われた世界は常識にはじかれて失われていくのではないかと、私なんぞはそう考えるのですがいかがでしょう?

このことについて、似たようなエピソードが実は描かれていたりします。
ex1の「きえたおとはどこへ」という話がそれです。
どんなあらすじかと申しますと、リューシカは最初、CDの聴き方を知らず、CDを手に持ってそれを眺めることで、空想で補いながら音楽を聴きます。
それを兄が見つけ、プレイヤーの存在を教え、CDに収録されている音楽をリューシカに聴かせます。
すると、リューシカが空想で補って聴いていた音楽は失われ、もう思い出すことができなくなってしまう…、というもの。

この話などは、端的に、空想や想像力が常識によって消えていってしまう様を示しているように思います。


余談ながら。
たまに思い起こされるのですが、昔「絶対に忘れない!」と誓ったことを、すっかり忘れてしまったなんてことはあります(私は頭が悪いので、なおさらです)。当時の自分にとって、かけがえのないような大事だったことのはずなのに、大半の「忘れない!」と思った内容はおろか、忘れまいと誓ったことそれ自体を忘れてしまいます。
少なくとも、私は頭の悪さも相俟って、そういう誓いのほとんどを覚えておりません。

今になって思うに、それ自体がどういうことだったのか思い出したいということもあるのですが、それ以上に、自分にとって、その忘れてしまったことは何がそんなに大事だったのかなぁ、何故、そう思ったのかということが知りたいですね。


閑話休題。
そんな訳で、「リューシカ リューシカ」、私なんぞにとっては「昔、似たようなことを考えていたなぁ…」というノスタルジックな面もありますが、基本、素直に笑えるものがたりですので、あまり難しく捉えずに御覧になっていただき、楽しんでいただきたい作品です。 

ということで今回は、主人公の女の子、姉や兄の名から判断するに、恐らく日本人なのに何故「リューシカ」?と思われた方は、単行本でご確認下さい、あるいは、正確を期すためAmazonで、「ニアアンダーセブン」をチェックしてみたら、…中古で4,980円?いくらなんでも高すぎだろ、という話。

 

追記:
話は少しずれますが、少しばかり関連するところ。私にしては珍しく、現在比較的人気がある方々の音楽について。

何かと申しますと、BUMP OF CHICKENの「魔法の料理~君から君へ~」。
偶然、「みんなのうた」で聴いて気に入りました。多少、話題になりましたから、既にご存知の方も多くいらっしゃるかと思います。一応、法を学んだ者として、権利関係を考えるに、やはり、ここにURLは載せるべきではないと思いますので、気になった方は、面倒かもしれませんが、You Tubeなどで「BUMP OF CHICKEN 魔法の料理」と検索をかけてみてください。
個人的には、「みんなのうた」のアニメーションコミで上がっている、5分弱のバージョンがお薦めです。

…BUMP OF CHICKEN、他の彼らの曲はほとんど知らないんだけど、「花の名」いう曲も良かったなぁ。
歌詞とPV(バックで、どうも都市が空爆されているみたいなんですよね)とのギャップが、妙に引っかかりますが。
イメージとしては、アップテンポの曲が多いような気がするんですが、彼らのスローな曲の方が、個人的には気に入っているようです。

 


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コメント 2

LAUNCHING

私は家にいる間はエアコン付けっぱなしw
エコだとか地球温暖化なんぞ知るものか!って感じで
我侭に涼んでいます。

「NieA_7(ニアアンダーセブン)」ですか?
たしかアニメは面白かったと記憶している。
・・・けど、細かい話しの内容は忘れた(笑)

でも、粋狂さんからBUMP OF CHICKENの名が出てくるとわ
どちらかというと「さだまさし」って感じかと勝手に想像してました。
失礼でした・・・スンマセン(゚゚)(。。)ペコッ
by LAUNCHING (2010-07-26 19:42) 

粋狂

>LAUNCHINGさん
 「NieA_7」。
 私も、アニメーションも観てました。漫画は漫画で、異なる話が展開しているのですが、雰囲気は共通していて、面白かったですよ。

 
 BUMP OF CHICKEN、さだまさし。
 実は当たらずとも遠からずで、はやりから外れたところが好きなことも多いですし、昔の曲(70~80年代前半くらいの)や、フォーク・ソングも基本、結構好きです。

 ちなみに、さだまさしとBUMP OF CHICKENの上記の曲は、共通項としてアコギがありますから、私の中ではそんなに違いはなかったりします。
 って、こんなことを書くと、両者のファンから怒られるかもしれませんが。

 …単に、ギターの音好きなだけかもしれません。楽器、全くできないんですけども。
by 粋狂 (2010-07-27 08:01) 

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