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最近のお気に入り作品―三島衛里子「高校球児ザワさん」― [漫画]

最近、気に入っている作品があります。
連載が始まったばかりで、しかも、一話8頁くらいの話なので、早々に単行本化はされないでしょうから、単行本で作品を見るというスタンスの方からすると、しばらく目にする機会はないのですが、個人的に旬なので、これを逃すことはないと思いますので、ちょいと書いておこうかと。

スピリッツに連載されている、三島衛里子「高校球児ザワさん」という作品になります。

どんな作品かと申しますと、革新的で、漫画史に名を残す名作という訳ではありませんで(8頁という小品な作品ですし)、タイトルの通り、高校球児(野球)の日常を描いた作品になっています。
ただ、その主人公の高校球児「ザワさん」というのは、都澤理紗という女の子、なんですね。


思うところをつらつらと書きますと、主人公のザワさん、かなり無口ですが、無愛想ということもなく、また、飾り気もないのですが、ボーイッシュで可愛い印象を受けます。個人的に、こういう娘さん、好みです、私。…私の好みはどうでもいい? いや、まあ、そうなんですけども。

…気を取り直して。
また、今まで描かれたエピソードを読むに、…結構うっかりしているというのか、かなり抜けているところがあります。スラパンを家から穿いて来たので、パンツを忘れたり、坊主頭と見るや先輩と認識して挨拶を欠かさないのはいいけども、先輩の顔を覚えていないので、別に野球部の先輩ではない坊主頭の人(=おしゃれ坊主)にも何度も挨拶したり…。
また、男子の中に混じって、部活に励んでいるところから、さばさばとしたところがあるのと同時に、性的なところで妙に間が抜けているところとか。

キャラクターの顔の造作からすると、一見、クールな感じで、しっかりしているように見えるので、かなりギャップがあって、なんかいいなぁ、と思います。ボケたところに的確にツッコミを入れられるときの、上手いこと言葉を返すこともできず、顔を真っ赤にして照れているところ(←口数が少ないので、上手いこと言い訳できないらしい)とかなども、もう、オッサン大喜びです
…まあ、ありがちといえばそれまでなんですが。絵柄が好みであることが、評価を甘めにしているかもしれません。


それで、作品を初めて目にしたとき「そういえば、こういう娘さんを描いた作品って、どこかで読んだことあるような…」という既視感があったのですが、なんだったろうかと思い返してみるに、瓦敬助「菜々子さん的日常」に思い当たりました。
ザワさんって、「菜々子さん…」の主人公、菜々子さんにどことなく似ているんだなぁ、と(後述の描き方が多少類似していることも、少なからず影響していると思いますが)。

まあ、「菜々子さん…」は、一応18禁扱いの作品なので、抜けているところが違うのですが(敢えてどこがどうとは申しませんが)、何とはなしに、根の部分が似ているような気がします。
…蛇足ながら、その「菜々子さん」、続編というのか、今度、単行本出るなぁ、というのも付記しておきます。


話を「ザワさん」に戻しまして。

描き方の特徴で、気付いたところを。
この作品だけ、という独特の特徴というのではないのですが、「終始、主人公の視点から描いていない」というのがありますね。
「主人公を見る側」の視点から描かれている、というのが、ちょっとした特徴といえます(ちなみに「菜々子さん…」も基本、菜々子さんを見る側の視点から描かれているので、この点からも、なんとなく似ている印象を受けます)。
ですから、主人公の発する言葉までは作中に現れるんですが、主人公の内心については、文字では書かれず、絵で描かれた主人公の表情などから読み取ることになります(それが、非常に分かりやすい娘さんなので、そこがまたいいんですけども)。

今のところ、私が記憶している限り、主人公の心情が、明確に文字で書かれたことがないように思うのですが、この点は比較的珍しいもののように思います。…珍しい、ですよね? そうでもない、かな。


もうちょっと、抽象的な話なんぞもしてみましょう。
野球に魅せられて、マネージャーであるとか、高校球児を応援したりして支える側でなく、実際に野球をやる選手としてその中に入る。
よくあるとまではいきませんが、結構見受けられますね。メジャーなところで、現在進行形の作品ですと、あだち充サンデーで連載中の「クロスゲーム」とか。
また、小学館系では、原秀則「やったろうじゃん!!」の番外編というのか、スピンオフ的な読みきりを描きましたが、その中でも、野球部に選手として入った女の子と、その子にちょっと惹かれる、レギュラーのキャッチャーを主人公にしたものがありました(以前のエントリにも書かせていただいてますが、短編集の「さよならゲーム 」に収録されています)。

高校の硬式野球の大会参加者規定によって、女性の参加が認められないというのは、有名な話ですが、公式戦に出られない者が、それでも敢えてその中に入る、というのは、余程の思い入れがあるというのが、看て取れます。

ただ、一方で、その中、すなわち、野球部というコミュニティは、基本的に男の子の集まりな訳でして、そこに女の子が入ってくるのは、異物が混入するのに等しいともいえます。それをどう受け取るのかは、周囲の男の子の了見の広さなのかもしれませんが、まだ高校生という若造の子達ですから、自分のことで精一杯というのが、通常ではないかと思います。そもそも、自分が周囲の男子球児と同じ立場だったとしたら、他のチームメイトと同じように接するというのは、ちょっと難しいかもしれません。ちょっと線を引いてしまうような気がしますね。
実際、原秀則の作品では、あからさまに「異物」という感じと併せて、チームメイトから、その野球に対する熱さを、うざがられているという、ちょっと不憫な娘さんでしたし。

ただ、これを無責任に外から眺めると、また印象が違っているのも事実でして。
明らかに異端とされる者が、敢えてそこに飛び込む。この辺りで、健気で可愛い、という印象を受けるように思いますが、いかがでしょう?
そういえば、考えてみるに、野球に限らず、こういう作品は、結構見受けられますね。ぱっと思いつくだけでも、女の子ながら新撰組に入る「風光る」とか、女の子なのにもかかわらず、身分を偽って男子校に入学する「花ざかりの君たちへ」とか。

「萌え」などという言葉を使うのは、個人的に非常に嫌なのですが、場違いなところに入り込んで女の子が健気に頑張るという話は、何かいいなぁ、と思います。頭をなで繰り回したくなります。
…ちょっと気になるのは、私自身は寡聞にして存じませんが、こういった「場違いなところに飛び込んで健気に頑張る娘さん」好み、という特殊な萌え的なジャンル分けというのも、存在するんでしょうかね?


で、今回の締め。
ともあれ、「高校球児ザワさん」。小品な作品かもしれませんが、ちょっと一息つくような、そんな作品でして、お気楽に読むにはなかなかいい作品かと思いますので、宜しかったら、ご一読されてみてはいかがかと思います。 

ということで、今回は、「可愛い娘さんが好き!」という私の趣味全開の話をお送りいたしました、という話。

追記:
一方、「ザワさん」が連載されている、スピリッツで思い出した、がっかりな話。
先日、エントリで書かせていただいた、和田竜「のぼうの城」がコミック化しました。それ自体は、確かにめでたいことなんでしょうけれども…何故、花咲アキラ。本当に、勘弁して欲しいんですけど。
気に入った作品だけに、もっと、上手い人に描いて欲しいなぁ、と。
重い劇画タッチで描く、というのもちょっと違う気がしますけれども、花咲アキラという選択は、「…もっと違うのではなくて?」と、ちょっとお嬢風にがっかりです。


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みけにゃん

「のぼうの城」コミカライズされたんですね・・・知りませんでした。
どうせなら表紙を書かれているオノナツメさんに書いてほしかった。
by みけにゃん (2009-02-15 17:59) 

粋狂

>みけにゃんさん
そうなんですよ。先日、スピリッツでコミック版の「のぼうの城」の連載が終了しましたので、近いうちに単行本になるのではないかと思います。

私も、あの表紙の表情をした「のぼう」や、オノさんお気に入りの丹波をどう描くのか、見てみたかったです。

…「電車男」のように、いろいろな方のコミック版という訳にはいかない、でしょうかね。
by 粋狂 (2009-02-15 21:39) 

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