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美術展に立て続けに行く(1) [鑑賞]

書く習慣が抜けてしまったため、放っておくと「書く機を逸しちゃったし、まあいいか」となって、放置しまくりになってしまうので、たまには更新。

という訳で、先日会期終了した、東京都美術館で開催していた「エル・グレコ展 El Greco's Visual Poetics」と、
ふと急な休みがもらえたため、そろそろ会期終了する「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」を見てきました。

まずは、エル・グレコ展について。

印象として、色合いにクセがあって、妙に青みがかっていて、あまり好きな色合いではないなぁ、と思っていたのですが、実物を見てみると、それがなかなかどうして。

ルノワールの絵を見たときにも思いましたが、今のところ、印刷では実物を伝えきることはできないのだなぁ、と思います。
その実物から抜け落ちてしまうものが多い作風というものがあるように思います。エル・グレコもそういう方なのではないでしょうか。
色合いが綺麗に印刷では出ていないように思います。印刷では実物より、コントラストが強く出すぎたり、色が濃くなってしまっているように思います。…大きい絵を縮小して印刷するためかもしれませんね。

さて、その色合い。
エル・グレコの初期にはカラフルな色合いの作品もあるんですが、そういった作品より、特徴的な全体が青みがかった作品の色合いの方が綺麗な印象でした。
ただ、本人の個性というのか、なかなか他の人がその色合いで作品のバランスを取るのが難しいのか、本人の作品以外の工房や弟子(なのかな)の作品になると、途端に魅かれるものがなくなるというか。

その意味で、本人作か疑わしいという話のある「白貂の毛皮をまとう貴婦人」ですが、全体が妙に明るく、また、エル・グレコはタッチにざらついたところがあるように思うのですが、そういったところもなく…。色合いが本人の作品っぽくないんですよね。

エル・グレコの作品には、女性の肖像画を描いたものがあまりないので、比較できないのですが、他の男性の肖像画に比してみると、作品が全体的に明るく、かえって平板で凡庸な印象を受け、「これ、本人の作品?」と思ってしまうのですが…。いや、この作品が好きな方がいらしたら申し訳ないのですが。

また、エル・グレコの特徴として、頭身が引き伸ばされているということが、しばしば言われます。
私が見た印象ですが、…違和感なし。いや、対比として、他の方の作品が並んでいたら、気になるかもしれませんが、エル・グレコの作品ばかりを見る分には、そんなに気になるものではないように思います。

それとも、漫画でデフォルメ・記号化が進んだ絵を見慣れているからなんでしょうか。いや、漫画を馬鹿にしたものでは決してなく、悪意的に捉えないでいただきたいのですが。

また、体のS字、逆S字のポーズが数多くみられるところが印象的で、エル・グレコがマニエリムスの代表的な画家といわれることに納得いきます。
もし、私がエル・グレコについて、どういう絵を描くのか訊かれたら、多分、青みがかった色合いと、細長いS字・逆S字の印象について答えると思います。

DSCN1225.JPG

上は、図録の表紙「無原罪のお宿り」 中央少し右の聖母マリアを中心に、作品全体が全体的に逆S字の流れがあるように思います(何かピント合っていませんが、気にしない!)。

もうひとつ。これは主に顔の描き方なんでしょうか、頭身の引き延ばされた細長い人物もでしょうか、彼のキャリアのスタートでもある、イコン画家の描き方がずっと根底にあった方なのかなぁ、という感想を持ちました。

あと、作品がデカい!です。思っていた以上に大きいものが多いです。1メートルの作品はざらで、3メートルの作品とかもありましたし。物質感は、そのまま迫力を感じます(そんな辺りも、引き伸ばされた頭身について、違和感を指して感じさせないのかもしれません)。

あと、これは完全に個人的な嗜好なのですが、エル・グレコの描く女性はすごく綺麗で、好きだなぁと思います。

DSCN1226.JPG

図録後ろ「聖アンナのいる聖家族」のうちの、聖母マリアのアップです。

 DSCN1227.JPG

ポストカードもいくつか買ってみたのですが、中央が「悔悛するマグダラのマリア」 は、綺麗な作品でした。今回の展示の中で、個人的には、一番好きな作品かもしれません。…他の著名な作品も素敵でしたけども。

で、まとめ。
私が言えることは、印刷で彼の作品を見て、色合いが好みでないなぁ、と思った方は、一度実物をご覧になってみると、その印象が払拭されることがあるかもしれません。

余談ながら。
上記で書いていることを読んでいただければお分かりかと思いますが、私は本物の迫力がどうであるとか、本物にはオーラがあるから、といった理由で「本物、すげぇ!」というものではありません。
多分、私は、贋作でもできのいいものであれば、印刷の真作より、贋作の実物の方がいいと思うのではないかと思います。

絵画は二次元のものと考えがちですが、筆のタッチであるとか、絵画の大きさや、絵画と鑑賞者の位置関係によって受ける印象の変化があることなど、もっと立体的なものであるため、印刷では、その良さが十分に再現できないものであるから、というのが理由です。

ということで今回は、「すごいよ『ギリシャ人』」という話。


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