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ロマン・ノワールな世界-寺田克也「ラクダが笑う ファイナル・カット」- [漫画]

暗黒小説というジャンルがあります。語感からすると、黒魔術のような、なんともアヤシゲな印象を受けますが、そうではありませんで。

この暗黒小説の妙な語感の理由は、フランスの「ロマン・ノワール」の「訳語」だからでしょう。
では、そのロマン・ノワール、どういうものかと申しますと、アメリカのハードボイルド小説の影響からフランスで生まれた小説の分野でして(その後、アメリカに逆輸入されます)、社会的に悪とされるものが栄えるといいますか、「力」がものをいう、そんな暴力的な世界観が背景に見られるものが多いです。

で、私は少ないながらも、この分野の担い手のエルロイの作品(「ブラック・ダリヤ」)、日本では馳星周の作品を読んだことがあります。ジム・トンプスンも1冊読んだのですが…、なんだかげんなりして、以降彼の作品は読んでいません。…そういえば、エルロイもトンプスンもアメリカの小説家で、本家のフランスのロマン・ノワールを読んだことがないのに、今気付きました。

その中で、馳…の作品などは、暴力に併せて、少しのロマンスというのか、少し情に訴えるようなウェットなシーンがあり、単に殺伐とした世界ではない辺り、ハードボイルドの影響というものを感じます(読んでいると、フィリップ・マーロウの「男はタフでなければ生きていけない。優しくなければ生きる資格がない」という言葉が、頭をかすめる感じがします)。
彼の作品は、好きです。文章にスピード感があって。最近は全然読めていませんが、一時期は結構読んでおりました。
…と、こんなことを書きますと、また読み始めたくなりますね。


何でそんな話をしたのかと申しますと、これです。

ガン見.jpg

舐める.jpg

事の現場を激写!

「目の前に、美味しい匂いがしたら、とりあえず舐めてみる。それが私」
いや、お前、親に甘やかされまくってるせいで、躾がなってないから!

…いやいや、そうではありません。
日本の漫画において、暗黒小説的な作風の作品って、全くないことはないのでしょうが、あまり見かけないなぁ、と思ったんです。
ある作品を読んで、逆に、その珍しさに気付きました。

その作品というのが、寺田克也「ラクダが笑う ファイナル・カット」(徳間書店)です。
この作品、まさに、暗黒小説の世界です。暴力的な世界において、自分の快楽(特に性的なそれ)に身をゆだねつつも、案外身内に対する情に厚い男「ラクダ」が主人公のものがたりで、騙し騙され、裏切り、信じたマヌケはハメられる、そんな立場がコロコロと変化していく話が展開していきます。疾走感がたまりません。

ただ、全面的に暗黒小説的な作品かというと、これがそうではありませんで、やはり、漫画的なユーモラスなところも散見され、漫画としてきちんと成立した面白い作品です。

それで、その作風も珍しいのですが、画力も抜きん出ていて、日本ではあまりお目にかからない類の上手さ(別に、海外の方の画力が全て高い、という意味ではないです)というのも珍しいです。
…逆にこれがネックで、日本より、海外での方が評価が高くなりそうな気がしないでもないですが、まあ、それはそれとしまして。

Love & Violence な世界観が、お好きな方にはお薦めな作品です。
興味を持たれた方は、御覧になってみてはいかがかと思います。


おまけ:今月、実家に行った際に撮った三代目
あくび.jpg

悪い奴ほどよく眠る1.jpg  悪い奴ほどよく眠る2.jpg

オチとしては、ロマン・ノワール的な世界観っぽく「悪い奴ほどよく眠る」ということでいかがでしょう。
しかし、間抜けな面だなぁ…。この間、実家に行ったときよりデブになってたし。


ということで今回は、「タフで優しいから生きている資格がある…」というのは、西村しのぶ「サード・ガール」の中で、フィリップ・マーロウの科白を正確に思い出せない涼の科白でしたが、私自身は、へなちょこで優しくない、怒りっぽい性格なので、生きている資格がなくて、だから相方がいないのかなぁ、と反省しきりです、という話。

 

 


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