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リベンジ!ということなのか? [漫画]

先日購入した雑誌や単行本をいくつか眺めてみるに、ふと気づいたことがありまして。今回はその辺りの小ネタを書いてみます。

その、あれ?と思った作品というのは、

長田悠幸「TRIBAL12」
三宅乱丈「イムリ」
単行本はまだありませんが、「SQ」に連載されている、和月伸宏の新作「エンバーミング」、も挙げられるように思います。

私が、これらの作品に共通して感じることは、自身の前作・旧作と設定がかぶっているというのか、なにがしか、似ているのではないかと、そういうことです。
あ、先に申し上げますけれども、私が感じる前作・旧作との類似性をもって、私は「自分の作品を焼き直しやがって…、引き出しの狭い漫画家だ!」などと非難するつもりはございません。


 

で、まず、和月…の新作ですけれども、この作品、御覧になれば感じるでしょうが、前作「武装錬金」の時代設定を変えて、そして、人造人間の名称を「ホムンクルス」から、「フランケンシュタイン」に変えて、新たにスタートを切った、そんなふうに思います。
また、主人公が、人間に敵対する人造人間を斃す、というのが基本的な話という辺りも前作と同じですね(主人公が、人造人間に危害を加えられたのがきっかけ、というのもまたしかり)。

「武装錬金」が、ジャンプ本誌では、打ち切りっぽく終了してしまって、赤マルで、締めだけはなんとか、という感じだったので、もう一度、類似した設定でもってチャレンジしたかったのではないか、そんなことを感じずにはいられません。

いきなり脱線。科学系の読み物で読んだ話になりますが、本家のメアリー・シェリー「フランケンシュタインの創造物」というものがたりは、当時における最新の科学を反映した部分のある物語だったりするのだそうです。
なんとはなしに、学校の授業や、教科書の記述で記憶にある方もいらっしゃるかと思いますが、ちょん切った蛙の脚に電気を流すと、脚が動くという実験がありますが(…あ、いや、私は実際に実験したことはないですよ? なんか、そういう実験をかつてやった方がいた、とか何とかという話を、教科書で読んだことがある、という意味です)、あの実験結果が出た辺りに、「フランケン…」が書かれたのだとか。

どういうことかってぇ申しますと、「生物を動かす根源となるものは何か?」という問いに対して、「電気を通すと、体が動くのであるから、生物を動かす根源は電気にある」という「風説」を受けたものだったようで、怪物に生命を吹き込む際に、多大な電力が必要となって、嵐の日の落雷によって誕生する…ということになるようです。

あ、ただし、実際の実験結果からは、「生命の根源は電気」という結論にはならないのは当然ですが(確か、神経の伝達物質が化学変化を起こし身体の各所へ信号を送る際に、微弱な電気が発生することから、電気を流すと伝達物質が信号を送るのと同じような現象が起きる、というものだったのではないかと)、当時、そういう誤った情報が多少流布したんでしょうか?

そういった意味では、「フランケン…」という作品は、比較的新しいところでは、瀬名秀明の「パラサイト・イブ」(…「新しい」とか、書いている割に、随分と懐かしい作品になっちゃったなぁ)とか、そういった系譜のものがたりということになりそうです。
どちらかというと、「ドラキュラ」同様に、ゴシック・ホラーな印象を受ける作品だけに、自分でも結構意外な感じです。

さらに、どうでもいいような話ですけども、和月…の作品の人造人間を「フランケンシュタイン」というのは、少しいただけません。あえてそうしていると思うのですが、ちょっと違和感があります。
というのも、元ネタにおいて、フランケンシュタインは、人造人間を作り出した博士の名前であって、人造人間そのものには名前がないためです(単に、クリーチャーと呼ばれています)。この辺り、ケネス・ブラナーが監督し、デ・ニーロが人造人間を演じた映画「フランケンシュタイン」が、強調してましたね。


 

で、話は変わって、三宅乱丈の「イムリ」。
これは、和月の「エンバーミング」のように、一見して分かるほどの類似性はないのですけれども、人間の意思を、超能力でもって強制的に支配する設定から、昔スピリッツで連載していた「ペット」との類似性を感じます。サイキックもので、人を操るという辺りに類似性を感じます。

旧作の「ペット」、この作品で、私は三宅…を初めて読んだのですが(その前に、「ぶっせん」で名前が売れていたのは知っていたのですが、「ぶっせん」、当時は未読でした)、かなり強烈な印象でした。
人の頭に「ダイブ」して、その記憶をいじり、操ることができるという設定や、その設定内の「ここをいじって壊してしまうと、人格が崩壊してしまう」という「ヤマ」や「タニ」という縛り、その抽象的、観念的な脳内イメージをビジュアル化して、見せることができる技量も、そして現実と、いじられた記憶が混在した状態を、読み手に理解できるように見せられる技術…。凄いなぁ、と思ったのを覚えています。

で、類似性とは異なるのですけれども、三宅…の特徴?にひとつ気づいたのですが、この方、設定というのか、現実世界と微妙に異なる世界・社会のルールに凝る方だなぁ、と。
そして、なおかつ自身の作品世界を貫くルール―結構複雑だったりするのですが―を、くどいと感じさせずに、すっと読ませるなぁ、と、私なんぞは感じます。

SF・ファンタジー世界が舞台の「イムリ」などは、凝った設定が顕著で、単行本に、用語解説や、世界における階級の設定、人物の多さから、簡易の人物説明などが入っているくらいです(でも、説明的に過ぎるだろ、とはあまり感じないんですね、不思議と)。
…この情報量の多さ、換言しますと「重さ」から、近時の漫画にはなかなかみられない、良質な長編ファンタジー小説のような重厚なつくりを感じられて、私などはかなり好きなんですけれども、モノをあまり考えずに読めるものを好む方には、あっさり敬遠されそうで、読み手を選んでしまうんだろうなぁ、と思いますね。

「お客様は神様」なんてぇ、申しますけれども、神様だからって、下にも置かず、上げ膳・据え膳といった感のある、読み手にやさしいというのか、読むのが楽な、平易な作品だけでなく、読むのにも多少は考えるような、読み手にも多少の労を要する作品というのも、読むのに疲れるけど、読み応えがあって、かなりいいんだけどなぁ、と思います。


 

さて、上記の和月…と三宅…、これらの作品に共通するのは、前作・旧作の世界が、現代社会であったのに対して、今回は時代設定を変えて描いている、という点でしょうか。

どうしても、現代社会だと、無理が生じてしまうのか、それとも、描きたいものを考えると、時代設定や世界を異なるものにした方が描きやすいのでしょうかね。


 

で、最後に長田…。「北斗の拳」の外伝は、正直、絵柄との違和感にずっと首をかしげておりましたが(いや、だって、北斗の拳といえば、原哲夫絵ですから)、オリジナルを始めたのは嬉しい限りです。

ただ、なんだろうなぁ、というとろこもないではなく。今度の「TRIBAL12」は、なんとなく、パワーがない感じがします。変に落ち着いてて、あまり心躍りません。上手く転がってくれると良いんですが…。私、長田さんのファンですし。

…と、1巻では感じていたんですけれども、2巻になってから、話が展開してきて、ちょっと楽しみになってきました。

ただ、気になるところが少々。
私自身の不勉強を棚に上げてしまいますけれども、敵役となるBABEL(…このワードを書くと、椎名高志「絶対可憐チルドレン」を検索している方に引っかかってしまうかもしれませんけれども、その辺りはご勘弁のほどを)の5つの悪夢…、これってぇのは、キリスト教の原罪、では? などと思うのですが。何で、5つなんかなぁ、と思いますね。元来、原罪というのは5つ、なんでしょうか。最終的に、7つになることを予定している、ということなんでしょうかね。神学とか、詳しくないものですから(というより、ちと勉強したりしてしまった日にゃあ、はまりそうで…)。
この辺りも、どうなるのか、続きを待ちたいと思います。


 

和月…と三宅…、長田のこれらの作品に共通するのは、前作・旧作において、ラストまでじっくり描けなかったという点でしょうか。

といいましても、作者によって、じっくり描けなかった事情が異なるかもしれませんね(無論、私は関係者ではありませんので、詳しい事情は分かりません。あくまで、推測に過ぎませんよ?)。

和月…の方は、掲載誌のアンケートの結果がよろしくなかったという噂を聞いたことがありますけれども(実際、掲載の最後の方は、概ねラスト近くでしたし)、本当のところはどうなのか分かりません。…噂通り、ではないかと思いますが、まあ、一応分かりません。

また、その辺りに関連して、変な話を耳にしたこともありまして、「錬金」という言葉に、子供が変な反応をしたというものがありました。
「錬金」って、「鋼の錬金術師」から設定パクってんじゃん、ということで、子供が食いつかなかったとかなんとかという話、なんですが、…最近の子供って、モノ知らないなぁ。錬金術という言葉は、荒川弘が作ったものじゃないから!
ただ、当時の年齢の頃は、私もそのくらい、頭悪かったのかなぁ…。昔過ぎて覚えていません…。

そんな不確かな、変な話はさておきまして、運悪く、あまり受けずに終了してしまった前作でしたけれども、作者の中では、この設定は面白いと思ったんでしょうか、再度このようにして、もう一度「人造人間もの」にチャレンジしているように思います。今度はどうなるでしょうか。また、「るろうに」の印象が強すぎて、その後の作品はあまり…という印象がありますが、これも払拭できるでしょうか。経過を見守りたいと思います。いや、私なんぞに見守られなくても、描かれるでしょうけれども。

話は変わって、三宅…の方の事情は、全く分からないのですが、話が急展開してしまって、主人公が逃げて終わってしまったような印象があります。私が受けた印象は、作者が行き詰まりを感じてしまったように感じましたが…、どうでしょうか。
現代社会という舞台設定だと、なにかしら描きにくかったんじゃないかと、私は推測しております。それで、描きたいものを、より描きやすい舞台を設定して描こうということで、再度サイキックものにチャレンジしたのではないか、と思っておりますが、いかがでしょうか?

長田は「トト!」。これは、明らかに、打ち切りっぽく終わっちゃいましたね。単行本の最後の方に、描けなかった設定とか、書いてましたし。

ちなみに、長田…は、「トト」という名のついた作品を、2回描いています。何故か、「オズの魔法使い」をモチーフにして、自身の作品に取り入れてますね(トト、というのは、「オズの魔法使い」の主人公ドロシーの飼犬の名前になります)。今回の「TRIBAL12」も、この流れになりますね。三度目の正直となるのでしょうか。

私は、寡聞にして存じないのですけれども、長田…は、「オズの魔法使い」に対して、多大な思い入れでもあるのかなぁ、と感じます。…ここまで、長田が「オズ…」に拘るのは、自分なりの「オズ…」を描ききったとの満足感が得られていないから、ということなんでしょうかね。

考えてみるに、「オズの魔法使い」、キャラクターとか、いろいろといじれて、面白いですよね。東洋の作品では、「西遊記」がそれに近いかもしれません。してみると、結構、両作品をモチーフにした漫画というのがあることに気付かされますね。樹なつみ「OZ」も、タイトルから分かるとおり、「オズの魔法使い」がモチーフですし。…「OZ」はいい作品ですねぇ(ものっそい好きな作品のひとつです)。…ふと思い出しましたけど、鳥山明「ドラゴンボール」も、元は、まんま「西遊記」だもんなぁ。どんどんかけ離れてしまったので、つい忘れてしまいますけども。

そういえば、別の漫画家になりますけれども、田邊剛という漫画家は、オリジナルを描いてはボツをくらいまくり、何を描いたらいいのか、見えなくなってしまった時期に、既に存在するアリモノのものがたりに、絵をつけるような形で作品を描いていたことがあるそうで(「アウトサイダー」(エンターブレイン)より)。
何がしかの勉強になるやもしれませんので、行き詰まりを感じている方には、ご自身が気に入っている作品に絵をつける形で描いてみてはいかがだろうか、などと適当なことを思ったりします。
…ただ、門外漢ながら、このようなことをしてみると、ものがたりが自分の手を通して、具体的な形になっていることから、忘れかけていた自分の描きたいものが、何か見えてくる、そんなことが起きるような気がします。甘いでしょうかね。


 

ということで、結論としましては、これらの作品は、何がしかの事情から、上手くいかなかった作品を再度練り直して、もう一度世に出してみた、いわゆる「リベンジ作品」ではなかろうかと思うのですが、とそういうことです。…やっとタイトルにつながりました。

で、さらに思うんですが、そういったリベンジ作品というものがあるとして、そういった作品とは別に、一人の人からつむぎだされる作品というものは、同一人物が描いている以上、どこかしら、同じ根っこを感じたりします。
一人の人間が強く訴えたいようなことというのは、そういくつもないように私は思いますから、そのことを持って、幅がないなどと批判するつもりなどありません。

この辺り、私が好きな漫画家の一人である坂口尚は、長編において、いい作品を残していると思いますが、どの作品のテーマも、ひとつのことに通じて行くように思います(いつか、触れられたら、そのことについて書きたいのですが、いつになったら書けるのやら…。文才のなさにへこみます)。
また、幸村誠は「ヴィンランド・サガ」において、前作「プラネテス」同様に、終局的に「愛」について描きたいのではないか、そのように思っています、私。

ということで今回は、まとまりのない話で、自己満足的に、漫画を小難しくこねくり回してみました、という話。
…いまひとつ、何がいいたいのか分からない、グダグダの駄文を、最後まで御覧になられた方、お疲れ様でした。


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粋狂

>たねさん
 どの辺りに反応されたのか、不明ですけれども、nice!を戴きまして、ありがとうございます。
by 粋狂 (2008-02-08 19:59) 

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